わたしたちがめざしているのは、住み継ぐほどに成熟していく「資産価値が高まる住まい」です。
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構造研究室 

1)日本の木造住宅

  我が国における木造家屋の歴史は長く、木と人との関りはこれからもずっと続いていくでしょう。そんな歴史の中で、木造住宅は、地震と火災との闘いを繰り返えしています。 江戸時代には、3つの大火(明暦の大火・明和の大火・文化の大火)がありましたが、毎年大きな火事が発生していたみたいです。
 
過去の地震の被害状況過去の地震の被害状況

過去の地震の被害状況

 
また大地震も数年に一回発生し、安政江戸地震のように火事を併発していたようです。現在、火災に関しては近年材料等の進歩や都市計画、耐火建築物等の普及で大火は、少なくなっています。しかし、地震に関しては、今日でも不十分なことが多く一つの地震で何千もの家屋の倒壊ということが実際起こっています。建築士は、大地震が発生しても、建物の全壊(倒壊)という最悪の事態は回避出来る様な、安心、安全な住宅を造り、長期に渡ってその性能を維持していく仕組みを提供することが我々の使命です。それには、木構造を理解することからが始まりです。
 
 
 
 

2)木構造の基礎知識

木造住宅は、大きく分けると三つの工法があり、在来軸組工法、木質プレファブ工法そして枠組壁工法(2×4)です。構造は、水平力(地震、風)を耐力壁で支えることで三工法とも壁式構造です。(最近では、ラーメン構造を一部取り入れた構造もあります)従って耐震要素の耐力壁を十分耐えうる量で、平面的にも立体的にもバランスよく配置することが重要な要素です。
 
木造構造模型木造構造模型

構造模型

  耐力壁の配置が偏ると壁の少ない箇所で過大な変形が生じて折損等の損傷を受けやすくなります。それが倒壊の引き金になります。構造体の安全性は、接合部の耐力によって決まることが多く、耐力壁についても部材の変形よりも部材と部材の接合部の変形の影響が支配的であることが、実験等で明らかになっています。従って建物を構成する部材の接合部が木造住宅の耐震強度を決めるといえます。木材は、剪断力(地震力)にたいしては、脆性的な破壊性状を示し、木材の繊維方向にたいしては、剪断破壊をします。また、繊維に直角に引張が働くと脆性的な破壊をします。
 
木構造の基本構成木構造の基本構成

 
施工上、梁や柱の欠損や大きな欠損仕口は、木造住宅の最大の弱点となります。地震等の被害で腰折れといわれる一階部分の倒壊というものをよく見かけますがこれが要因一つです。また倒壊等にならなくても内部応力としてためこまれ(割れ裂き、引き裂かれ)二回目以降の剪断力で倒壊という最悪の事態も想定されます。
 
 
 
 
 

3)地震と木造住宅

 わが国の耐震設計の考え方は、新耐震基準法が導入された1981年(建築基準法施行令の改正:新耐震設計法)から2つの考えに基づいている。
① 震度5強以下の中程度の地震に対して、建物は損傷しないこと(1次設計)
② 震度6強程度のごく稀に起こる大地震に対して、ある程度の損傷は、あっても倒壊せず人命を守る(2次設計) *耐風性や耐積雪性も同様の考え方
 このような考えにもとづいて、許容応力度や必要壁量(層間変形角の制限)が定められていました。しかし、1995年の兵庫県南部地震で建築関係者の認識不足や意識の違いなど被害程度の意識差があることが大きな問題となり、基本理念を明確にするため2000年に住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)ができました。その品確法における耐震等級3は、木造住宅では、最強の建物です。日本においては、50年以上住宅が建っているとした時、中地震以上をその建物は必ず経験します。その時に生き残る(建て残る)ための最低条件といえます。地震時においては、建物を弾性範囲内にとどめておくことが耐震設計の考え方(1次設計)です。品確法の耐震壁の量は、建築基準法と比べても荷重に対する考え方が見直されたため、耐力壁(筋交い)では基準法の2倍は、必要になります。
 
キラーパルスキラーパルス
  耐震設計の重要な考え方のもう一つは、大地震に対して、ある程度の損傷は、あっても倒壊せず人命を守る(2次設計)ことです。つまり建物の塑性化を発生させないことです。あるいは、発生させても出来るだけ遅らせることです。もともと、木造住宅や中低層の建物は0.3〜0.4秒の固有周期を持っています。それよりも長い周期1〜2秒の地震動で実際、建物被害が多く発生しています。0.3〜0.4秒の固有周期は、弾性限界内でこれを超えて塑性変形が起き始めると共振する振動の周期は、長くなります。建物の被害は、塑性化するときの等価周期で決まり周期が1〜2秒の地震動は、たとえ一回の振動であっても、建物の塑性化を引き起こして大きな被害を与えます。この周期が1〜2秒の地震動は「キラー・パルス」と言われています。兵庫県南部地震(1995)は、建物の倒壊が多く発生しました。新潟県中越地震(2004)、中越沖地震(2007)も同様です。東北地方太平洋沖地震(2011)では周期が、0.5秒内と地震による倒壊は、少なかったといわれています。では、どうしたら塑性化を遅らせることができるか。先ずは、筋交い等を多く配置(均等)し、2階の床や屋根面をしっかり固めることです。
 
金具工法の強さ金具工法の強さ
そして木造建築の最大の弱点である接点を強固にすることです。接点つまり、柱と梁の接合部や土台と柱の接合部、筋交いと柱や梁の接合部を大地震が来ても塑性化しないような物を使用することです。そのためにテックワンP3という大地震時でも破壊することが少ない接合金物を使用しています。接合部の応力は、通常の接合の2倍以上です。梁や柱等の部材の断面欠損がほとんどなく、内部に応力をため込む(割り裂き、引き裂かれ)ことも少なく、建物の耐力を長く維持することができます。
 
さらには、想定以上の地震で最悪破壊をする時でも、部材がスチールでできているため粘りを持ちながら破壊をしていきます。壊滅的な一気に倒壊するということは、避けることがきます。 木造住宅の耐力、つまり強度を低下させるものとして、腐朽や蟻害そして湿度等もあります。つまり材料の劣化によるものです。建物は、新築時の耐力が一番大きく、年と共に低下をしていくのも事実です。腐朽などが原因で20年後には耐力が半分以下になることもあります。したがって、白蟻やカビ菌等の対策も重要です。日本は、夏の高温多湿、冬の低温乾燥と住宅の耐力を維持していく環境には、厳しいものがあります。それには、地域の環境に適した建材を選び、換気、防腐処理等維持管理がしやすい設計施工を行うことも大切です。
 

4)これからの木造住宅

 現在の木造住宅の耐用年数は、50年は当たり前で、100年以上も可能になってきています。15〜20年で建替える時代は終わり欧米並みの70年以上が基本となりつつあります。従ってその建物が、大地震を2回以上経験することもあり得る時代になりました。従って50年経った建物でも大地震に耐えうる構造体が、2回3回の大地震でも大丈夫という強固な構造体が必要になってきました。耐震等級3は当たり前で、構造体に応力やひずみを残さないように柱直下率を70%以上にすることや、換気や防腐処理等その環境に適した建材を使用し、維持管理がし易い設計施工を心がけることなど、費用対効果を考慮しつつ、お客様にそれらの提案をすることが、私たち建築士の使命です。
  


 
 
住宅は、そこに暮らす人の最後の砦なのです。
 

 

住宅は、そこに暮らす人の最後の砦なのです。